2025/8/20
法律コラム
労務問題
労務問題#1|有給休暇取得義務違反で罰金も?|経営者が弁護士に相談すべき重要ポイント

目次
- 有給休暇取得義務違反で罰金も?経営者が弁護士に相談すべき重要ポイント
- 1. 有給休暇取得義務の要件と経営者の責任
- 1.1 労働基準法改正による年5日の有給休暇取得義務
- 1.2 対象となる従業員の範囲と経営者が知るべき基準
- 1.3 時季指定義務と労使協定の重要性
- 2. 有給休暇取得義務違反による罰則と経営者へのリスク
- 2.1 労働基準法違反による罰金額と処分内容
- 2.2 労働基準監督署による是正勧告と指導の流れ
- 2.3 企業イメージ低下と採用への影響
- 3. 経営者が弁護士に相談すべき有給休暇管理のトラブル事例
- 3.1 従業員からの有給休暇取得拒否に関する訴訟リスク
- 3.2 退職時の未消化有給休暇の買取問題
- 3.3 パワハラと認定される可能性のある取得妨害行為
- 4. 弁護士が推奨する有給休暇取得義務への適切な対応方法
- 4.1 有給休暇管理簿の作成と保存義務
- 4.2 就業規則への記載事項と変更手続
- 4.3 計画的付与制度の導入メリット
- 5. 経営者が今すぐ確認すべきコンプライアンスチェックリスト
- 5.1 有給休暇取得状況の把握方法
- 5.2 未取得者への対応フローの整備
- 5.3 証拠書類の保管と管理体制
- 6. まとめ
- 7.ご相談は当事務所へ
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有給休暇取得義務違反で罰金も?経営者が弁護士に相談すべき重要ポイント
2019年の労働基準法改正により、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。違反した場合、1人あたり最大30万円の罰金が科される可能性があり、経営者にとって重大なリスクとなっています。
本記事では、有給休暇取得義務の具体的な要件、違反時の罰則、弁護士への相談が必要なトラブル事例、そして適切な対応方法について詳しく解説します。労働基準監督署の是正勧告を受ける前に、必要な対策を講じることが企業防衛の鍵となります。
👉 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」パンフレット(PDF)
1. 有給休暇取得義務の要件と経営者の責任
1.1 労働基準法改正による年5日の有給休暇取得義務
2019年4月1日施行の働き方改革関連法により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給休暇を確実に取得させることが使用者の義務となりました。この改正は労働基準法第39条第7項に規定され、同項に違反した場合は罰則の対象となります。
経営者は、有給休暇の付与日(基準日)から1年以内に5日間の有給休暇を取得させる必要があります。労働者が自ら請求・取得した日数や、労使協定による計画的付与で取得した日数は、この5日から控除できます。
項目 | 内容 |
|---|---|
施行日 | 2019年4月1日 |
根拠法令 | 労働基準法第39条第7項 |
取得義務日数 | 年5日 |
罰則 | 30万円以下の罰金(労働者1人につき) |
1.2 対象となる従業員の範囲と経営者が知るべき基準
法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者すべてが対象となります。これには正社員だけでなく、一定の条件を満たすパートタイム労働者や有期雇用労働者も含まれます。
具体的な対象者の基準は以下のとおりです。
入社後6か月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者には10日の有給休暇が付与されます。また、週所定労働日数が4日以下のパートタイム労働者でも、週30時間以上勤務する場合や、継続勤務年数により比例付与で10日以上となる場合は対象となります。
雇用形態 | 対象となる条件 |
|---|---|
正社員 | 入社6か月後から対象 |
パートタイム(週30時間以上) | 入社6か月後から対象 |
パートタイム(週4日勤務) | 継続勤務3年6か月以上で対象 |
パートタイム(週3日勤務) | 継続勤務5年6か月以上で対象 |
1.3 時季指定義務と労使協定の重要性
経営者には労働者の意見を聴取したうえで、時季を指定して有給休暇を取得させる義務があります。基準日から一定期間が経過しても5日の有給休暇を取得していない労働者に対しては、使用者が時季を指定して取得させなければなりません。
時季指定を行う際は、労働者の意見を聴き、できる限りその希望に沿った時季に取得させる必要があります。また、時季指定を行う場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲、及び、時季指定の方法等を就業規則に記載し、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成して5年間(当分の間は3年間)保存することが義務付けられています。
計画的付与制度を導入する場合は、労使協定の締結が必要です。この制度により、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を定めて与えることができます。計画的付与で取得した日数は、5日の取得義務から控除されるため、確実な取得促進と業務の計画的な運営の両立が可能となります。
2. 有給休暇取得義務違反による罰則と経営者へのリスク
2.1 労働基準法違反による罰金額と処分内容
2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得させることが使用者の義務となりました。この義務に違反した場合、労働基準法第120条により罰則が科せられます。
違反内容 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
年5日の有給休暇取得義務違反 | 30万円以下の罰金 | 労働基準法第120条 |
有給休暇管理簿の作成・保存義務違反 | 無し | 労働基準法施行規則24条の7 |
就業規則への記載義務違反 | 30万円以下の罰金 | 労働基準法第120条・89条 |
重要な点として、罰則は対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われるため、違反者が複数いる場合は罰金額が累積される可能性があります。
2.2 労働基準監督署による是正勧告と指導の流れ
労働基準監督署は定期監督や申告監督を通じて、有給休暇取得義務の履行状況を確認します。違反が発覚した場合の対応は以下の流れで進められます。
初回の違反発覚時には、通常是正勧告書が交付され、期限を定めて改善を求められます。是正勧告に従わない場合や悪質な違反と判断された場合は、書類送検される可能性があります。
段階 | 対応内容 | 経営者が取るべき行動 |
|---|---|---|
1. 立入調査 | 帳簿書類の確認、聞き取り調査 | 正確な情報提供と協力 |
2. 是正勧告 | 違反事項の指摘と改善指示 | 期限内の是正報告書提出 |
3. 再監督 | 改善状況の確認 | 継続的な法令遵守の証明 |
2.3 企業イメージ低下と採用への影響
有給休暇取得義務違反は、法的制裁以外にも企業の社会的信用を著しく損なうリスクがあります。特に労働基準法違反で書類送検された場合、企業名が公表される可能性があります。
違反企業として認識されると、優秀な人材の確保が困難になり、既存従業員の離職率上昇にもつながる恐れがあります。
また、取引先からの信頼失墜により、ビジネスチャンスの喪失という経営上の深刻なダメージを受ける可能性もあります。コンプライアンス重視の大手企業では、労働法令違反企業との取引を制限する場合もあるため、経営者は法令遵守を最優先事項として捉える必要があります。
3. 経営者が弁護士に相談すべき有給休暇管理のトラブル事例
有給休暇の取得義務化により、経営者は従業員の権利を適切に管理する責任が増大しています。法的トラブルを未然に防ぐため、早期の弁護士相談が重要です。
3.1 従業員からの有給休暇取得拒否に関する訴訟リスク
有給休暇の取得を拒否された従業員が、会社に対して損害賠償請求を行う可能性があります。また、労働基準法第39条違反により、6ヶ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科される可能性があります(同法119条1号)。
特に、時季変更権を行使した場合であっても、繁忙期を理由とした取得拒否や、業務の引き継ぎを理由とした先延ばしは、違法性が認定される可能性がありますので、注意が必要です。
3.2 退職時の未消化有給休暇の買取問題
原則として有給休暇の買取は禁止されていますが、退職時の未消化分については例外的に認められる場合があります。
退職前の有給休暇一斉取得により、業務引き継ぎが困難になるケースでは、買取による解決を検討する企業も存在します。ただし、買取金額の算定方法や就業規則への記載方法について、弁護士への相談が推奨されます。
買取が認められるケース | 買取が禁止されるケース |
|---|---|
法定日数を超える部分 | 法定日数内の有給休暇 |
時効により消滅する有給休暇 | 在職中の買取強要 |
退職時の未消化分 | 取得抑制目的の買取 |
3.3 パワハラと認定される可能性のある取得妨害行為
有給休暇の取得を妨害する行為は、パワーハラスメントとして認定され、企業の安全配慮義務違反を問われる可能性があります。
厚生労働省の定義によると、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」有給休暇取得への圧力は、パワハラに該当します。具体的には、取得申請に対する執拗な理由の聴取、同僚への負担を理由とした取得断念の強要、人事評価への悪影響をほのめかす発言などが該当します。
パワハラ認定された場合、被害者に対する慰謝料の支払いだけではなく、企業イメージの低下による採用難や離職率の上昇といった二次的被害も発生する可能性があります。経営者は管理職への適切な教育と相談窓口の設置により、予防体制を構築する必要があります。
4. 弁護士が推奨する有給休暇取得義務への適切な対応方法
労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させることが使用者の義務となりました。弁護士が企業に推奨する適切な対応方法を、実務的な観点から解説します。
4.1 有給休暇管理簿の作成と保存義務
労働基準法施行規則第24条の7により、使用者は労働者ごとに有給休暇管理簿を作成し、5年間(当分の間は3年間)保存する義務があります。管理簿には以下の項目を記載する必要があります。
記載必須項目 | 記載内容の詳細 | 注意点 |
|---|---|---|
基準日 | 有給休暇を付与した日 | 入社日から6か月経過日など正確に記録 |
日数 | 基準日から1年以内に取得した有給休暇の日数 | 時間単位取得分も含めて管理 |
時季 | 有給休暇を取得した日付 | 半日単位・時間単位の場合はその旨も記載 |
管理簿は労働者名簿や賃金台帳と合わせて調製することも可能です。電子データでの保存も認められていますが、労働基準監督署の調査時には速やかに提出できる体制を整える必要があります。
4.2 就業規則への記載事項と変更手続
有給休暇の時季指定を行う場合、就業規則に時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について記載する必要があります。就業規則の変更手続は以下の流れで行います。
まず、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴取します。その後、労働基準監督署に届出を行い、労働者への周知を徹底します。
就業規則に記載すべき具体的な内容として、時季指定を行う時期、意見聴取の手続、時季指定を行う際の労働者への通知方法などを明確に定める必要があります。
4.3 計画的付与制度の導入メリット
計画的付与制度は、有給休暇の取得促進と業務の計画的運営を両立させる有効な手段として、多くの専門家が推奨しています。労使協定により、有給休暇のうち5日を超える部分について計画的に付与することができます。
導入により、有給休暇取得率の向上、業務の繁閑に応じた効率的な人員配置、従業員の満足度向上などのメリットが期待できます。ただし、労働者が自由に取得できる有給休暇を最低5日は確保する必要がある点に注意が必要です。
4.3.1 一斉付与方式の活用法
一斉付与方式は、事業場全体で同一の日に有給休暇を付与する方法です。製造業など、全体で操業を停止することが可能な事業場に適しています。夏季休暇や年末年始休暇と組み合わせることで、長期連続休暇の実現が可能となります。
実施にあたっては、労使協定で具体的な一斉付与日を定め、全従業員に周知する必要があります。また、年次有給休暇の日数が少ない新入社員への対応として、特別休暇の付与なども検討すべきです。
4.3.2 個別付与方式での運用ポイント
個別付与方式は、従業員ごとに計画的に有給休暇を付与する方法です。サービス業など、一斉に休業することが困難な事業場に適しています。各従業員の希望を聴取したうえで、年間の有給休暇取得計画表を作成することが重要です。
運用時は、部署内での業務調整、取得日の変更手続の明確化、緊急時の対応ルールの策定などが必要となります。また、計画表は定期的に見直し、未取得者への個別フォローを行う体制を整備することが、確実な取得義務履行につながります。
5. 経営者が今すぐ確認すべきコンプライアンスチェックリスト
労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させることが義務化されています。違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があるため、経営者は以下のチェックリストに基づき、自社の管理体制を早急に確認する必要があります。
5.1 有給休暇取得状況の把握方法
経営者は従業員ごとの有給休暇の付与日、取得日、残日数を正確に把握する仕組みを構築しなければなりません。以下の項目を定期的に確認してください。
確認項目 | 確認内容 | 確認頻度 |
|---|---|---|
有給休暇管理簿の整備状況 | 全従業員分の管理簿が作成され、最新情報が記載されているか | 毎月 |
年5日取得義務の進捗 | 基準日から1年以内に5日取得できる見込みがあるか | 四半期ごと |
時季指定の実施状況 | 取得日数が5日未満の従業員への時季指定を行っているか | 基準日から6ヶ月経過時 |
特に基準日から半年を経過した時点で取得日数が2日以下の従業員については、早急に時季指定を検討する必要があります。
5.2 未取得者への対応フローの整備
有給休暇の取得が進まない従業員に対しては、段階的な対応フローを整備することが重要です。
まず、基準日から3ヶ月経過時点で取得日数がゼロの従業員をリストアップし、所属長と人事部門が連携して個別面談を実施します。この段階では、従業員の希望を聞き取りながら、計画的な取得を促します。
次に、基準日から6ヶ月経過時点で取得日数が2日未満の場合は、経営者または人事責任者から直接、時季指定の予告を行います。この際、業務の繁閑を考慮しつつ、従業員の意見を聴取した上で、残りの期間で確実に5日取得できるスケジュールを設定します。
経過期間 | 取得日数の目安 | 対応内容 |
|---|---|---|
3ヶ月経過 | 1日以上 | 所属長による取得勧奨 |
6ヶ月経過 | 2日以上 | 人事部門からの個別指導 |
9ヶ月経過 | 4日以上 | 時季指定の実施 |
5.3 証拠書類の保管と管理体制
労働基準法により、有給休暇管理簿は5年間(当分の間は3年間)の保存義務があります。労働基準監督署の調査に備え、以下の書類を適切に管理する必要があります。
保管すべき書類として、有給休暇管理簿、時季指定を行った場合の通知書、従業員からの有給休暇申請書、労使協定(計画的付与を実施している場合)が挙げられます。これらは電子データでの保管も認められていますが、改ざん防止措置を講じる必要があります。
また、退職者の書類についても、退職後5年間(当分の間は3年間)は保管義務があるため、退職者分を別途管理するファイリングシステムの構築が推奨されます。定期的な監査実施により、書類の不備や保管漏れを防ぐ体制を整えることが、コンプライアンス違反を防ぐ上で極めて重要です。
6. まとめ
2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の取得が義務化されました。経営者は時季指定義務を負い、違反した場合は1人あたり最大30万円の罰金が科される可能性があります。
有給休暇管理簿の作成・保存、就業規則の整備、計画的付与制度の導入など、適切な管理体制の構築が不可欠です。労働基準監督署の是正勧告や従業員とのトラブルを未然に防ぐため、労働法に詳しい弁護士への早期相談が推奨されます。
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