レジリエンス法律事務所

2025/8/7

  • 法律コラム

  • 事業承継

親族内承継の法的ポイント|経営者が押さえるべき注意点と円滑な引き継ぎのための整備

目次 _______________________________

はじめに:親族内承継は“法的準備”が成功の鍵

中小企業の経営者の平均年齢は年々上昇し、2025年には70歳を超える層が1/3を超えるとされています。黒字経営にもかかわらず、後継者不在で廃業を選ぶ企業が増加している現状は、地域経済にも大きな影響を与えています。

その中で注目されているのが「親族内承継」。企業の理念や文化を守りながら事業を次世代へ引き継ぐ有力な手段ですが、親族間の感情や相続の複雑さが絡むため、法的な整備を怠るとトラブルの火種となりかねません。

参考:中小企業庁|親族内承継に関する現状分析


1.  親族間での承継における主な法律上の注意点

1.1  遺留分と遺産分割

  • 民法上、配偶者、子、又は直系尊属に該当する相続人には「遺留分」が認められており、相続人の一人に対する株式の集中承継には配慮が必要です。

  • 遺言書の作成や遺産分割協議、信託等を通じて、相続人間の合意形成を図ることが重要です。

1.2  株式の集中と経営権の安定化

  • 株式が分散すると、経営権が不安定になり、意思決定に支障をきたす可能性があります。

  • 種類株式の導入や持株会社の設立など、会社法上の手段を活用することで安定化を図れます。

1.3  経営者保証の解除

  • 金融機関との契約により、現経営者の個人保証が後継者に引き継がれるケースがあります。

  • 「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、保証解除の交渉や準備が必要です。

参考:中小企業庁|経営者保証に関するガイドライ


2.  円滑な引き継ぎのための法的整備

2.1  遺言書の作成

  • 自筆証書遺言・公正証書遺言の選択肢と法的効力

  • 遺留分への配慮と遺言執行者の指定

2.2  株式の承継方法の選定

  • 相続・贈与・売買のいずれかを選択し、税務・法務の観点から最適化

  • 事業承継税制の特例措置を活用することで、税負担を軽減可能

参考:中小企業庁|事業承継税制(特例措置)

2.3  定款・株主総会の整備

  • 定款に承継に関する条項を明記することで、手続の透明性を確保

  • 株主総会での承認手続きや議事録の整備も重要


3.  事業承継のステップ一覧表の例

ステップ

内容

補足・具体例

後継者の選定と意思確認

家族会議の開催、後継者の適性評価、意向の確認

株式・資産の整理

相続・贈与・売買の選択、株式の分配、資産の棚卸

遺言書の作成と遺留分対策

公正証書遺言の作成、遺言執行者の指定、遺留分の配慮

定款・株主総会の整備

定款への承継条項追加、株主総会議事録の準備

経営者保証の解除

金融機関との交渉、経営者保証ガイドラインの活用

承継実行と事後フォロー

取引先・従業員への説明、信頼関係の再構築、支援体制


4. 親族内承継の成功と失敗に学ぶ|法的整備が分岐点となる理由

中小企業の事業承継において、親族内承継は最も多く選ばれる形態です。
しかし、準備不足や法的整備の不備により、親族間のトラブルや経営の混乱を招くケースも少なくありません。
本コラムでは、国や公的機関が紹介する実例をもとに、親族内承継の成功と失敗の分岐点を解説します。


5. 成功事例|計画的な法的整備が功を奏したケース

中小企業基盤整備機構が公開する事例集によれば、親族内承継を円滑に進めた企業の多くは、法的整備を早期に実施しています。

たとえば、ある製造業では以下のような対策を講じました:

  • 定款に「親族承継条項」を追加し、承継の方向性を明文化

  • 公正証書遺言を作成し、株式の集中を明記

  • 金融機関と経営者保証の解除交渉を行い、後継者の信用枠を確保

  • 社内の信頼関係を維持し、承継後も業績は安定

このように、法的・金融面の整備を計画的に進めることで、親族間のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな承継が実現しています。

🔗 親族内承継事例一覧|中小企業基盤整備機構


6.  失敗事例|親族間の意思不一致による承継断念

ある地方の製造業を営む中小企業では、創業者が長男への承継を希望していました。
しかし、長男は別業種でのキャリアを築いており、事業承継に対して消極的な姿勢を示していました。

  • 経営者は「いずれ気が変わるだろう」と準備を先延ばし

  • 後継者候補との具体的な話し合いは行われず

  • 経営者が高齢化し、体調を崩したことで急遽承継が必要に

  • 結果として、親族内承継は断念され、第三者への売却を余儀なくされた

この事例は、中小企業庁の「親族内承継に係る施策の効果検証(令和5年)」において、親族間の意思疎通不足が承継失敗の主要因として挙げられています。

🔗 中小企業庁|親族内承継に係る施策の効果検証(PDF)


7. 成功と失敗を分けるポイント

成功事例に共通する要因

失敗事例に見られる課題

定款・遺言による法的整備

遺言未作成・株式分散

金融機関との保証解除交渉

信用枠の確保失敗

社内の信頼関係維持

親族間の対立

第三者支援の活用

外部支援なし


8.法律事務所としての実務アドバイス

親族内承継を円滑に進めるためには、以下のような法的整備が不可欠です:

  • 定款の見直し:親族承継条項の追加により、承継の方向性を明確化

  • 遺言書作成等:公正証書遺言等により、株式集中や相続分配を明記

  • 株式の整理:後継者への集中を図り、経営権の安定化を促進

  • 保証解除交渉:金融機関との連携により、後継者の信用枠を確保

  • 第三者支援の活用:事業承継ネットワークや専門家の支援を受ける


9. まとめ|親族内承継は「準備がすべて」

親族内承継は、感情や関係性が複雑に絡むため、法的な裏付けと第三者の支援が不可欠です。
成功事例に共通するのは、「早期の準備」と「法的整備の徹底」。
私たち法律事務所では、定款整備・遺言作成・株式対策など、親族内承継に必要な法的支援をトータルでご提供しています。

事業承継をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。


10.ご相談は当事務所へ

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三重県四日市市を拠点とするレジリエンス法律事務所では、事業承継に精通した弁護士が、経営権の移行に伴う株式譲渡契約・役員変更・保証解除・定款の見直し・信託の活用など、幅広い法的課題に対応しています。

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※本記事は、記事掲載日現在の法令・判例等に基づき、一般的な法的知識を提供することを目的としたものです。
※個別の事案における法的判断は、具体的な事情により異なる場合がありますので、本記事の内容は、特定の事案についての法的助言を提供するものではありません。
※本記事の内容については、正確を期しておりますが、将来の法改正や解釈の変更等により修正が必要となる可能性があります。
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